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第41回東日本支部例会

テーマ:節足動物刺症の実態、主催:日本衛生動物学会東日本支部、共催:獨協医学会、山田吾郎:ハチ刺症について−刺症時の治療と予防的治療−、倉石 泰:虫刺症の痛みと痒み、石原重彦:変な病気?蚊アレルギー、夏秋 優:毛虫皮膚炎はなぜ生じるか
           日時:2003年3月7日(金)午後:
14:55-18:20
会場:横浜市健康福祉総合センター
(桜木町駅前)4F大ホール
TEL:045-201-2060
(当日のみ)045-201-8361
会場付近地図
会費:無料
(どなたでも自由に参加できます・予約不要)

〒321-0293 
栃木県下都賀郡壬生町大字北小林880
  獨協医科大学熱帯病寄生虫学教室
  日本衛生動物学会東日本支部事務局
(支部長・松田 肇
          

ポスター:(Acrobat Reader5.0用-Windows)  (Acrobat Reader4.0用-Windows)
(JPEG画像-Macintosh用)WindowsでもOKだが、上記ファイルがMacで不調のため
例会のねらい
足動物が人間に与える重要な被害の一つに感染症を媒介するということがありますが、その際に、節足動物が取る行動−刺咬−によって、痛み・痒み、あるいは皮膚炎等、虫刺症と呼ばれる症状が引き起こされる場合があり、治療が必要となることが珍しくありません。ここにはアレルギー(の誘発)が絡んでいる場合が少なくありません。また節足動物によっては体に有毒毛を生やし、人が触れることに対してこれが防御的役割をもっている場合があり、痛み、痒み、皮膚炎を起こします。これら節足動物の、刺咬あるいは接触に伴う刺症について、まず被害の著しいハチによるものを山田先生に取り挙げていただきます。わが国で毎年約40名の方が亡くなっており、その予防的治療の好成績は患者にとって朗報です。一方痛み・痒みは感覚的にわれわれははっきり認識できますがその反応機序は今だ分かっていない点が多く、倉石先生に、虫刺症に伴う痛みと痒みを取り挙げ、新しい知見をご紹介していただきます。また、蚊刺過敏症を呈する患者さんの中で、慢性活動性EBウイルス感染症およびNK細胞性白血病/リンパ腫を呈する多数の例が明らかになってきており、Tokura-Ishihara病という呼称が提案されております。石原先生に、最新成果を交えお話しいただきます。さらに鱗翅類(ガ・チョウの仲間)の幼虫の接触によってもたらされる有毒毛刺症は、痛み・痒みが著しいものですが、その皮膚炎にアレルギーの関与が明らかとなってきました。夏秋先生に詳しくご紹介していただきます。
 衛生動物学のテーマには人間に被害を与える動物の防除ということがありますが、感染症をもたらす以外に人に及ぼすこのような危害は、それらに対する防除の理由として認識する必要があります。また、被害を受けた後の治療についても理解が必要です。治療が困難な場合もあるようです。皆様のご来場をお待ちしております。
 また、演者の先生方には、ご多忙のところ、また遠方にもかかわらずご快諾をいただきましたことにお礼申し上げます。
(オーガナイザー:高井憲治・聖マリアンナ医大)
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ハチ刺症について−刺症時の治療と予防的治療−
山田吾郎 (国際医療福祉病院 呼吸器内科)
チアレルギーは昆虫アレルギーの一つであるが、わが国において、毎年40名近くがハチ刺症によって死亡している。死に至らなくても、長時間のショック状態による脳死状態、植物状態、腎不全などの重篤な状態が残存することもある。ハチは分類学上、膜翅目に属し、その種類は20万種を超える。この中で、ヒトを刺傷し、ハチアレルギーとして問題になるのは有刺類の中で、スズメバチ類、アシナガバチ類などに含まれる20種類あまりのハチである。ハチ毒はヒスタミン、セロトニンなどのアミン類、ホスホリパーゼ、ヒアルノニダーゼなどの酵素類、キニン、mast celldegranulation (MCP)ペプチドなどの低分子ペプチドが含まれている。ハチ刺症における全身性アナフィラキシー反応はT型アレルギー反応で、皮下結合織や粘膜下にある肥満細胞や血液中の好塩基球の細胞膜上でハチ毒抗原とハチ毒に対する特異的なIgE抗体が結合し、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離し、全身性蕁麻疹、血管浮腫、声門浮腫、気道収縮などによる気道閉塞、血管拡張による血圧低下、低酸素血症や脳循環不全による意識障害などの全身反応を惹起する。これらの反応は刺傷後、数分から15分以内に出現する場合が多い。IgE抗体の抗原としてはホスホリパーゼ、ヒアルノニダーゼが重要である。全身反応を呈しながら、ハチ毒特異的IgE抗体が陰性の場合も10%程度存在する、これらの症例の全身反応出現の機序は不明であるが、MCPやヒスタミンなどに対する過敏反応などの直接作用が考えられる。これらの全身性アナフィラキシー反応の治療はエピネフリンの皮下注、抗ヒスタミン剤、輸液、ステロイド剤の治療が必要になるが、刺傷後数分で症状が出現しているため、医療機関に搬送される前に死亡している場合が多い。今回は刺傷時の急性期治療として、エピネフリンの自己注射と予防的治療としてのハチ毒急速減感作療法とその効果について紹介させていただくつもりです。
プロフィール:山田吾郎
昭和54年3月獨協医大医学部卒業。昭和54年から55年、獨協医科大学病院、国立栃木病院内科臨床研修。昭和56年から62年獨協医科大学アレルギー内科(現呼吸器アレルギー内科)助手。昭和62年から平成8年同科講師その間国立栃木病院呼吸器科医長、大田原赤十字病院呼吸器科部長。平成元年から平成3年英国ロンドン、St. Geroge’s Hosopital Medical School のDepartment of Immunologyに留学。平成8年下都賀郡市医師会病院副院長、平成11年大田原赤十字病院呼吸器科部長。平成14年国際医療福祉大学教授、同病院呼吸器内科。研究歴は気管支喘息の病態生理、特に気道過敏性、好酸球顆粒蛋白、ハチアレルギー急速減感作療法。所属学会は日本内科学会、日本アレルギー学会(評議員)、日本リウマチ学会、日本呼吸器学会、日本化学療法学会。日本内科学会、日本アレルギー学会、日本リウマチ学会、日本呼吸器学会認定医。
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虫刺症の痛みと痒み
倉石 泰 (富山医薬大・薬学部・薬品作用学研究室)
みと痒みは,ともに生体の危険を感知する生体防御感覚としての役割を担う。痛みが,生体のさまざまな部位における外界からの侵襲と内部環境の異常を感知し,逃避反射あるいは防御行動を起こすための感覚であるのに対し,痒みは,皮膚表層の寄生虫や刺激物を感知し,掻き動作などにより侵入物・刺激物を除去するための感覚である。
 泉南を中心に近年日本に帰化したセアカゴケグモLatrodectus hasseltiiは,咬刺部に炎症と強い痛みを生じ,多くの場合痛みが次第に耐え難いほどに強くなる。セアカゴケグモの咬刺は,マウスに対して致死性であった。クモ1匹の毒腺の1/3に相当する毒腺抽出物を注射すると,全例が咬刺後と類似の反応を示したが,1/30あるいは1/100の投与量では注射部位を頻りに舐める行動(痛み反応)を示した。この反応は,モルヒネが抑制したがアスピリン様薬物で抑制されなかった。毒腺抽出物を熱処理すると,痛み反応を引き起こす作用が消失することらか,タンパク質性の成分が発痛の主な原因である可能性がある。
 蚊刺症は強い痒みを伴う。この痒みがアレルギー性であることが古くから知られ,皮膚内のマスト細胞の脱顆粒で放出されるヒスタミンが原因であると一般に信じられている。マウスも,生後初めて蚊(ヒトスジシマカAedes albopictus)に刺されたときは蚊刺部をほとんど掻かないが,蚊刺を繰り返すと次第に掻く回数が増加した。蚊唾液腺抽出物を予め繰り返し注射しておくと,初めての蚊刺でも明らかに掻くことと,ヒスタミンを介した皮膚反応が起こることから,掻き反応は即時型アレルギーの痒みによるものと考えられる。ところが,蚊刺による掻き反応は抗ヒスタミン薬で抑制されなかった。蚊刺による即時型アレルギーの痒みにはマスト細胞―ヒスタミン系以外の機序が関与するものと考えられる。現時点では,蚊刺による痒みの機序の詳細は不明である。
プロフィール:倉石 泰
京都大学薬学部,同大学院博士を修了後,同薬学部で助手,助教授(薬理学)。1992年から富山医科薬科大学和漢薬研究所教授,1996年同薬学部に異動。痛み(神経痛,癌性疼痛)と痒み(アトピー性皮膚炎,乾皮症,アレルギー)について研究。
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変な病気?蚊アレルギー
石原重彦 (八幡中央病院・小児科)
『蚊アレルギー』とは、蚊刺後の局所症状がとても強く、水疱・血疱から潰瘍・瘢痕化に至るとともに発熱などの全身症状を伴う状態を指します。わが国では1968年に第1例が報告されましたが、症例の集積とともにその多くが血球貪食症候群や白血病などで死の転帰をとることが明らかになりました。
 1980年代後半、血液学的立場から慢性活動性EBウイルス感染症症例を集めていた石原はその既往歴の中に『蚊アレルギー』という記載が多くあることをひとり不思議に思っていました。一方、当時、浜松赤十字病院皮膚科に在職していた戸倉(現産業医科大学皮膚科学教室)は『蚊アレルギー』患児の末梢血リンパ球の60%がnatural killer(NK)細胞であることを見出し、ひとり興奮していました。
 1993年、このふたりが1本の電話をきっかけとして懇意になり、さらに、福岡大学医学部病理学教室の大島も加わり、『蚊アレルギー』に関する共同研究がスタートしました。これまでに明らかになった事項は次のようなものが挙げられます。
(1) 末梢血中にクローン性EBウイルスDNA陽性NK細胞増殖が存在する。
(2) 血清sFasL値がNK細胞白血病ほどではないが、高値である。
(3) NK細胞では抑制性受容体であるCD94が高発現している。
(4) 皮膚病理像では一部に血管中心性リンパ腫様の変化を認める。
(5) NK細胞白血病やリンパ腫と同様に染色体6qの部分欠失を認める。
 私たちはこの『蚊アレルギー』をNK細胞白血病の前駆状態あるいは亜型のひとつと考えていますが、いまだすべてを明らかにはできていません。今回のこの機会に医動物学や免疫学の先生がたから御助言をいただければ幸いです。
プロフィール:石原重彦
昭和29年6月大阪市天王寺区生まれ。学歴:昭和48年3月、京都府立乙訓高等学校卒業。昭和56年3月、鳥取大学医学部卒業。職歴:昭和56年7月、大阪大学医学部附属病院小児科 医員(研修医)。昭和57年4月、国家公務員共済組合連合会大手前病院小児科 医員。昭和59年7月、大阪大学医学部小児科学教室 研究生。慢性活動性EBウイルス感染症患児と出会う。昭和61年3月、大阪大学医学部附属病院小児科 医員。EBウイルス関連リンパ増殖性疾患について検討。平成2年4月、公立学校共済組合近畿中央病院小児科 医長。平成3年7月、大阪大学医学部小児科学教室 文部教官(助手)。いわゆる『蚊アレルギー』患児と出会う。平成6年6月、市立柏原病院小児科 医長。平成14年7月、八幡中央病院小児科 部長心得。
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毛虫皮膚炎はなぜ生じるか
夏秋 優 (兵庫医科大学 皮膚科)
クガやチャドクガの幼虫には毒針毛(どくしんもう)と呼ばれる有毒毛があり、これに触れることによって皮膚炎が生じることはよく知られている。では、なぜ毒針毛に触れると皮膚炎が起こるのか。以前は、その毛の中に皮膚炎を起こすような「毒」が含まれている、と考えられていたが、実はアレルギ−反応が関与していることが筆者の最近の研究で判明した。まずチャドクガの幼虫の毒針毛を毛虫皮膚炎の既往のある筆者の皮膚に接触させると、直後から痒みを伴う赤みと浮腫(即時型反応)が出現し、その1日〜2日後にはしこりを伴う赤み(遅延型反応)が出現した。次にこの毒針毛から毒液を抽出して、その中に皮膚炎を惹起するような化学伝達物質が含まれるかどうかを調べたが、検出できなかった。そこでこの毒液を筆者に皮内注射すると、直後には即時型反応、1〜2日後には遅延型反応が出現した。さらにボランティアに対してこの毒液で皮内テストを行った結果、全く無反応の人、遅延型反応のみ陽性の人、そして即時型反応と遅延型反応の両者が出現する人がいた。しかも、無反応なのは過去に毛虫に触れたことのない人たちだった。これらのことから、毒針毛に含まれる物質がアレルゲンとなって皮膚炎が生じること、それに対する感作状態が個人個人で異なっていることが判明した。
 一方、イラガやヒロヘリアオイラガの幼虫には毒棘(どくきょく)という有毒毛があり、これに触れると直後に激しい痛みを生じる。これは皮膚に注入された毒液成分による直接的な刺激によるが、その後はアレルギー反応によって痒みを伴う赤みが出現する場合がある。今回の講演では皮膚炎の原因となる各種の毛虫を紹介し、皮膚炎の実例を示しながら、その発症のメカニズムについて解説する。
プロフィール:夏秋 優
昭和59年3月に兵庫医科大学を卒業し、昭和63年に兵庫医科大学院(皮膚科)を修了して兵庫医科大学皮膚科の助手となる。平成元年〜平成2年に米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)皮膚科へ留学し、平成3年10月から兵庫医科大学皮膚科講師、その後、大阪府済生会吹田病院皮膚科医長を経て、平成12年4月から兵庫医科大学皮膚科助教授。主にアレルギー性皮膚疾患や昆虫による皮膚炎の研究、診療を行っている。

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