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東日本支部例会ニュース第4号
 
1999(平成11)年12月5日(日)
発行者:日本衛生動物学会東日本支部事務局
(支部長・倉橋 弘)
 
 1999から2000年へのサンタ   (倉橋 弘) 

36回例会企画者のねらい   (谷川 力)
 
第36回例会
演者からのメッセージ
 
田中 生男

杉山 和良

伊藤 武
 

 1999から2000年へのサンタ
 年は第15期活動の最後の年でありました。次回第36回の例会までは今期指名幹事により例会が企画されています。コンピュータの2OOO年問題など心配されているなかでの引継ぎですが、このような節目の時に遭遇することはチョット興奮します。長年きはするものです! 支部長を拝命して2度目のサンタクロースの季節となりました。年賀状はどうするかなどと思案しつつ、今年の支部活動を振り返って見ますと、今年も多くの方々のご支援をいただいたという思いでいっぱいです。第51回支部大会は10月8日浦和市で盛会に開催されました。高岡正敏大会長はじめ事務局の浦辺研一さん、お手伝いくださった方々、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。また、埼玉県や関連協会、会社からも多大のご支援をいただきました、心より感謝申し上げます。活動のもう一つの柱である例会も今期のスローガンである「たのしい、ためになる、たまりば」サンタの例会をめざして指名幹事の皆様がオーガナイザーとして文字通り「楽しいためになる」企画をして下さいました。毎回盛り上がった雰囲気で本年も2回開催することができ1999年から2000年に送ることができます。ありがとうございました。第36回例会は同封したご案内のように新年1月18日(火)に「家ネズミと人獣共通感染症」のメイン・テーマで谷川 力指名幹事の企画により開催されます。2000年の幕開けとなるこの例会にご参加をお待ちしております。それでは良いお年をお迎え下さい。
(支部長 倉橋 弘)

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 36回例会企画者のねらい
テーマ家ネズミと人獣共通感染症
 在、都市の住宅街に家ネズミ(クマネズミ)が増加しています。この問題は、東京都特別区の保健所や衛生部などのネズミ相談件数の増加からも明らかなように、住民にとっては深刻な問題となっています。ところが、ネズミから感染する病気については、サルモネラ症程度であまり知られていません。ネズミと人獣共通感染症をテーマにして、学会員およびその問題に関心のある方々を中心に例会を開催いたします。参加費は無料ですので是非ご出席ください。
 
(第36回例会 オーガナイザー 指名幹事 谷川 力)

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演者からのメッセージ
1. 現在のネズミの問題
  田中 生男 ((財) 日本環境衛生センター)
 ズミは人間の生活に深く関わってきた。とくに、建築物内のトプネズミRattus norvegicusとクマネズミR. rattusは、時代によって優占順位を変えながら家ねずみの主要な位置を占めてきた。1970年代に大都市のビルの主役がドブネズミからクマネズミヘと変遷したが、ここ数年になってビルへのトプネズミの復帰や、一般住宅へのクマネズミの侵入が報告されるようになり、住民からの苦情相談やPCOによる駆除実施件数などから推察すると、生息数も増加傾向にあるように思われる。
 ネズミがこれまで多くの疾病に関わり、また、病原菌の保菌者であるにもかかわらず、人々のネズミに対する被害認識は、物をかじられる以外には、うるさい、めざわり、存在が信用を失うなど、もっぱら精神面の問題として受けとめられる傾向が強く、汚いと認識していても、疾病の媒介者としての認識や知識はほとんど持たなくなったといってもよい。
 一方、駆除においてはビルなどの施設ではPCO、住宅では保健所などの指導による、殺鼠剤や粘着剤主導の住民自らの駆除が実施されているが、特に、クマネズミでは殺鼠剤に対する低感受性や抵抗性の発達、器具による捕獲の困難さがあり、防鼠対策が十分に行えない。駆除知識や意欲の欠如など数々の人側の理由もあり、十分な防除ができていない現状である。現在の都市環境や人々の生活行動を考えたとき、今後、憂慮される問題を数多く抱えている。
 
《田中生男氏のプロフィール》
 東京教育大学、日本専売公社試験場を経て日本環境衛生センター。殺鼠剤の効力・ねずみの駆除のほか衛生害虫の生体と防除に関する調査研究にあたる。主として有害動物の防除領域で厚生省・環境庁、関連団体、JICA等の調査研究にも従事。医学博士。

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2. ネズミから感染するウイルス性疾患、特にHFRSとネズミ
  杉山 和良 (国立感染症研究所)
 1969年にアフリカで発生したラッサ熱等のアレナウイルス科のウイルスはネズミにより媒介される。我が国では1970年代半ばから大学等の実験動物施設でラットに関わる人の間に不明熱の発生が見られ、韓国で報告されていた韓国型出血熱と同じウイルスであることが示された。世界各地で見られる本ウイルス群による出血熱を腎症候性出血熱(Hemorrhagic fever with renal syndrome: HFRS)と、またその病因ウイルスをハンタ(Hanta)ウイルスと呼ぶこととなった。1982年には国内の実験用ラットからウイルスが分離された。1960年代の大阪梅田で見られた不明熱も本ウイルスであることが判明した。幸いにして、その後、一般住民における明らかなHFRSの発生は報告されていない。しかしながら、国内に生息する野生ラット、特に港湾地区のラットにおいてHFSR関連ウイルスが広く保有されていることが明らかとなり、港湾地区及び隣接居住地区のドブネズミからウイルスが分離されている。一方、1993年に米国の南西部の州でハンタウイルスによる新しい疾病が発生し、極めて死亡率が高くハンタウイルス肺症候群(Hantavirus pulmonary syndrome: HPS)と呼ばれ注目されている。今回、ネズミ媒介性のハンタウイルス感染症の状況等について報告する。
 
《杉山和良氏のプロフィール》
 北海道大学獣医学部、同大学院修士を修了後、1981年から感染症研究所で出血熱ウイルスの研究ならびにP4施設運営に携わる。1996年からパイオセーフティ管理室長として病原体等の安全管理に携わる。獣医学博士。

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3. ネズミから感染する細菌疾患、特にサルモネラ食中毒とネズミ
  伊藤 武 ((財) 東京顕微鏡院 食品・環境科学センター)
 ズミは各種の病原体を保菌する動物であるが、サルモネラ、エルシニア、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター、リステリアなど、さまざまな食中毒起因細菌も保菌する。特にサルモネラを保菌したネズミがサルモネラ食中毒に関与したことがこれまでにも報告され、ネズミはサルモネラの感染源として重要視されている。ネズミのサルモネラ保菌率はネズミの生息環境により大きく変動する。サルモネラ汚染が高い屠場や家畜・家禽農場で捕獲したネズミはサルモネラ保菌率が高い。
 平成元年から鶏卵を原因とするSarmonella enteritidis (SE菌)食中毒が急増してき。この原因として鶏の卵巣や輸卵管にSE菌が侵入し、卵形成時に卵内がSE菌によって汚染されることが明らかにされてきた。鶏がSE菌に感染する経路としては、親鶏が(種鶏)からの介卵感染、飼料、飼育環境、孵卵場およびネズミが指摘されている。特に、SE汚染農場では鶏と同一タイプのSEがネズミからも検出され、鶏→ネズミ→鶏の感染環が形成される。すなわち、世界的に蔓延しているSE食中毒の防止にネズミ対策が重要な位置を占めている。
 米国ペンシルバニア州では州政府、大学及ぴ養鶏界の協力で、SE食中毒防止のための養鶏場のHACCPが構築された。重要管理点の一つとしてネズミ対策が打ち出されている。ただし、養鶏場の環境からネズミをゼロにするコントロールは不可能なことなので、モニタリングで捕獲されているネズミの数から、HACCP対策が打ち出されている。ペンシルバニア州の養鶏場HACCPはメリーランド州など他州にも導入されてきた。わが国においても養鶏場のネズミ対策はSE食中毒防止の重要なポイントであるので、これらの問題について報告する。
 
 
《伊藤 武氏のプロフィール》
 麻布獣医科大学獣医学部卒業後、東京都立衛生研究所に入所。細菌性食中毒の疫学やサルモネラ、カンピロバクター、O157など食中毒菌の生態、病原性、検査法について研究。現在は(財)東京顕微鏡院 食品・環境科学センター所長、麻布大学環境保健学部 客員教授。厚生省の食品衛生調査会や文部省の学校給食における衛生管理に関する委員会委員、日本食品微生物学会理事長。主な著書に「食中毒菌の制御」「食品中の微生物検査法解説書」「食品衛生検査指針 微生物編」「食水系感染症と紬菌性食中毒」「食中毒性微生物」「食中毒予防必携」「HACCEP これからの食品工場の自主衛生管理」などがある。

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